○安美錦−白鵬●

絶対的な強さがあるわけでもない。ただ、上位相手に何かやってくれそうな期待の持てる力士。そんな存在感を持つのが安美錦である。「安」で始まる不思議な四股名を持つハシリの力士でもある。そっぷ型の体型をしながら、柔らかな身体を有している。目を細めた安美錦スマイルを見ると、見ているこちらまで軟らかくなってきそうな感じすら受ける。
今場所は同部屋の弟弟子の安馬大関取りで騒がれているが、安美錦だって4場所連続して三役を務めていたこともある。それなりには強いってことだ。
九州場所初日結びの一番。朝青龍は休場している。右太腿を負傷している地元出身の魁皇豊ノ島の押しにあっさりと土俵を割っていた。結びの一番への観客の期待は高まる。
立合い、白鵬が左から張り刺しを繰り出すが、あごを引いた安美錦には効かず。安美錦、動きながら右を差し、相手の左腰に食いつきながら、外掛け。それを読んでいたのか、横綱は外掛けをかわして体勢を崩しながらも左からの上手投げで応戦。右足一本で上手投げを打つ横綱白鵬と、左足一本で下手投げを打ち返す安美錦。両者ほぼ同時に土俵に落ちたかと思われたが、白鵬の両足が先に宙を舞い、肘と顔とが先に土俵についていた。
低い体勢で前に出る圧力をかけていた安美錦が、投げの打ち合いで粘る横綱を制したこの取り組み、まさに安美錦の存在感を示した一番といえよう。