わずかな差がいつの間にか大きな差に

翔天狼(西十両9枚目)と玉飛鳥(東十両8枚目)は、二人とも秋場所幕下上位で好成績を上げて今場所十両に昇進した力士です(翔天狼は初めての十両で、玉飛鳥は再度の昇進という違いはありますが)。番付も8枚目と9枚目なので、これだけみるとそれほど大きな実力差があるとは考えにくいのですが、来年初場所では、幕内力士と幕下力士に分かれてしまうかもしれません。今、そんな状況が起きています。
両者がともに昇進・陥落となる可能性は、実はかなり低い(ほぼゼロかも?)のですが、もしもそうなってしまうと「ある時点での差がたとえわずかであっても結果に大きな差が出てきてしまう」というカオス的状況が相撲の番付で観測されることになります。

四股名 秋場所 成績 九州場所 成績 H21年初場所
翔天狼 西幕下筆頭 4勝3敗 西十両 12勝3敗 幕内昇進かも?
玉飛鳥 東幕下4 6勝1敗 十両 5勝10敗 幕下陥落かも?

というのはちょっと言い過ぎで、番付の上げ下げは、あえて差がつき易いように仕組まれています。一場所に7番もしくは15番の奇数個の相撲を取り、明確に勝越しと負越しが決まります(勝星と負星が等しくなる同点がない)。上げ幅、下げ幅は下位の段ほど大きくし、上位では幅を小さくすることで、幕内上位に安定して力を出せる力士が残るような仕組みになっています。逆に言うと、実力の伸びが停滞したような時には、番付上の一点に留まるのではなく、番付上の行ったり来たりを繰り返すことになります。普通だったら気力が萎えてしまうことでしょう。ただ、そういう時に腐らずに、稽古に励むことができるかどうかで、その後の実力の伸びが決まってしまうのだと思っています。

また、十両以上は定員の問題があります*1ので、幕下と十両、あるいは十両と幕内の入れ替えでは、それなりの成績を上げたのにもかかわらず、番付が上がらないということがたまに起こります。

大きな差と思ったけれど、実は小さな差にしかならなかった・・・

今場所、西幕下筆頭で5勝2敗の好成績を上げた福岡の新十両昇進が微妙なことになっています。来場所もまた幕下に留められるかもしれないのです。今場所の幕下上位での成績優秀力士は3名。東筆頭の安壮富士が6勝1敗、東10枚目の琴国が7勝全勝(おまけに優勝)しており、昇進の優先順位で言うと、福岡はこの二人に続く3番目に位置づけられます。
一方、十両から幕下に落ちそうな力士は、12枚目の磋牙司(5勝10敗)と10枚目の龍皇(4勝11敗)の二人ぐらいしか候補が見当たりません。あえて落とすとするなら、12枚目の白馬(7勝8敗)か8枚目の玉飛鳥(5勝10敗)ぐらいしか見当たりません(・・・ということで、玉飛鳥の件は最初に戻る↑)。
福岡にとっては5勝という大きな勝星も、今場所に限ってみると相対的には小さなものになってしまうかもしれません。いずれにせよ、水曜日の番付編成会議まで福岡は眠れない夜を過ごすことでしょう。

*1:幕内42人、十両28人。実は、幕下と三段目も決まっていて、それぞれ120人と200人。